“いつも通り”が崩れる日──就業不能は突然やってくる

こんにちは、飛行機に乗るたび「落ちたらどうしよう……いや、もうどうしようもないな」と無駄に覚悟を決めるユナイトnote編集部です。
「257日」
突然ですが、この数字、何の平均だと思いますか?
これは、精神疾患による平均入院日数です(正確には在院日数)。
ちなみに、身体疾患(骨折や内科的疾患など)の平均入院日数は約16日。精神疾患は、その16倍以上もの長さになります。
長期化しやすい精神疾患の入院
精神疾患の治療は、身体のケガや病気と比べて入院期間が長くなる傾向があります。
【入院日数の平均】
• 身体疾患:16日程度
• 精神疾患:257日程度(1年を超えることも)
しかも、入院すればすぐ回復とは限らず、症状が落ち着いたから退院というよりは、「地域で生活できる環境が整ったから退院」というケースも多いようです。地域の受け入れ体制によって、入院期間に差が生じることもあります。
通院治療が基本、それでも慎重な支援が必要
精神疾患の治療は、基本的に通院が中心です。厚生労働省のデータ(令和2年)によれば、精神疾患の患者数は約614万人。うち入院患者は約28万人、通院患者は約586万人にのぼります。
ただし、この患者数は集計方法の変更も影響していると思われます。平成29年時点では入院患者は約30万人、通院患者は約389万人でした。いずれにせよ入院患者より桁違いに多いのは明らかです。
通院は、地域移行の一つの形。訪問看護やグループホーム、就労支援などのサポートも含め、再発のリスクが高いことを踏まえた慎重な支援体制が必要とされます。
就業不能期間は数ヶ月〜1年超
精神疾患が就業に与える影響は大きく、一度の病気休暇(病休)で100日以上に及ぶこともあります。
限定的なデータではありますが、平成28年度「労災疾病臨床研究事業費補助金 総括研究報告書」によれば:
• 1回目の病休日数の平均:107日(約3.5ヶ月)
• 2回目の病休日数の平均:157日(約5ヶ月)
また、再発率も高く、6ヶ月以内に再発する人が約19%、2年以内では約37%に上ると報告されています。
比較として脳卒中による病休も平均106日とされており、精神疾患による離脱の長期性が際立ちます。
経営者こそ、ストレスとリスクに向き合う必要がある
精神疾患には、うつ病、適応障害、双極性障害、統合失調症、認知症など多様なものがあります。
原因は多岐にわたり、過度なストレスや慢性的な負荷によって発症することが多いとされます。責任が重く、孤独になりがちな中小企業経営者は、実はリスクの高い立場にあるとも考えられます。
【精神疾患から就業不能に至る流れ】
• 長期のストレスや過労
• 睡眠障害・意欲低下
• 判断力・集中力の低下
• 業務遂行が困難に
精神疾患は、見た目ではわかりにくいため、「昨日まで普通に働いていた人が突然働けなくなる」という事態が起きやすいのも特徴です。従業員がなってしまう可能性も考えられます。
予防と備えが、将来のリスクを軽減する
対策としては、ストレスをため込まない生活習慣の工夫が第一。
たとえば:
• 家族や友人と過ごす時間
• 運動や自然とのふれあい
• マインドフルネスや昼寝
• 生成AIに愚痴ってみる(実によく聞いてくれます)
また、公的な支援制度や民間保険の活用も有効です。
【主な支援制度・保険】
• 公的:自立支援医療・傷病手当金・障害年金
• 民間:医療保険・介護保険・就業不能保険
ただし、保険だけに頼ろうとするとコストが高くなることも。公的制度・自己対策・民間保険をバランスよく組み合わせるのが現実的です。
まとめ:見えにくいリスクに備える
• 精神疾患は、突然の就業不能リスクを伴う「見えにくい病」です。
• 入院・通院期間は長期化しやすく、再発率も高いことから、数年単位の離脱リスクが現実にあります。
• 経営者自身が当事者となる可能性も踏まえ、予防・支援制度・保険を含めた多層的な備えが必要です。
「心の健康も、経営の健全性の一部」──そう捉えていただければと思います。
お忙しい中、最後までお読みいただきありがとうございました。
※注意点
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• より正確な内容を知りたい場合は「■参考」などをご覧いただければと思います。
• 本記事は2025年5月時点の情報に基づいています。
• 詳細は税理士や税務署にご確認ください。
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■参考
▼第4回新たな地域医療構想等に関する検討会:資料|厚生労働省
▼心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き |厚生労働省