生命保険のホワイトデー-生命保険の評価額【所得税基本通達36-37】

こんにちは、UCnote担当です。
法人保険業界には、バレンタインショックというものがあります。法人税の通達改正の案内が出た時期に合わせてこう呼ばれています。
実はホワイトデーショックもあります。
なおバレンタインショックの記事は下方に置いてありますので、読んでいただけると幸いです。
それでは、早速行きたいのですが、先に注意点を2つあげておきます。
・具体的な経理処理につきましては所轄税務署や税理士などの資格を持った専門家にご相談ください。あくまで一般論と参考として記載しております。
・本記事は2022年3月11日現在の通達内容を基に構成しております。
■改正の目的は何なのでしょうか?
ざっくり言うと、法人から個人への名義変更を防ぐ目的で改正されました。名義変更時には、法人から個人が保険を買い取る形になりますが、その時の保険の評価額の算定方法を変える改正です。
■何税に関する通達改正なのでしょうか?
ホワイトデーショックは、法人税ではなく所得税に関する通達変更です。
所得税基本通達36-37が対象です。
内容は、保険の資産価値はいくらとして計算するのか?です。
■どのように変わったのでしょうか?
●改正前の内容
(保険契約等に関する権利の評価)
36-37 使用者が役員又は使用人に対して支給する生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約に関する権利については、その支給時において当該契約を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額)により評価する。
●改正後の内容
(保険契約等に関する権利の評価)
36-37 使用者が役員又は使用人に対して生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約(以下「保険契約等」という。)に関する権利を支給した場合には、その支給時において当該保険契約等を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額。以下「支給時解約返戻金の額」という。)により評価する。
ただし、次の保険契約等に関する権利を支給した場合には、それぞれ次のとおり評価する。(1) 支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、当該支給時資産計上額により評価する。
~中略~
(注)「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうち当該保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払部分の保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金等で処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。
私なりにまとめ直しますと、
●改正前の内容
解約返戻金額を評価額とする。
↓
●改正後の内容
解約返戻金額を評価額とする。
ただし法人税基本通達9-3-5の2(定期保険及び第三分野保険)に該当する契約は以下の方法で評価する。
①解約返戻金<資産計上額の70%の場合
資産計上額を評価額とする。
②解約返戻金≧資産計上額の70%の場合
解約返戻金額を評価額とする。
「解約返戻金額が評価額になる」という基本的な考え方は変わっていません。
但し書きとして、特殊事例の場合の評価方法が追加された形です。
同じ契約でもタイミングによって評価額の算定方法が変わる内容となっています。
■いつから変更でしょうか?
見直しの案内は2021年3月。
通達の効力発生は2021年7月1日からです。
この効力発生は名義を変更するタイミングです。
対象の保険は2019年7月8日以降に契約した定期保険及び第三分野保険です。
法人税基本通達9-3-5の2がその日から対象のためです。
■まとめ
バレンタインショックからのホワイトデーショックです。
法人税からの所得税です。
解約返戻金額での評価が基本ですが、一部保険に関しては資産計上額になる場合があります。
ちなみにこの改正は、「既契約の保険も法人税基本通達9-3-5の2に該当すれば対象になる」ということで物議をかもしました。
どう改正されるかは「上のみぞ知る」世界です。
■定期保険並びに第三分野保険の通達改正
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