法人保険「バレンタインショック」とは?

こんにちは、UCnote担当です。
季節感の全くないタイトルです。
今回は法人保険の税務のお話です。
■法人税基本通達の内容
法人を契約者とした生命保険、いわゆる法人保険は、企業の税務が関係してきます。その内容は法人税基本通達の中に書かれていますので、その内容に沿って税務を執り行います。今回は2019年7/8~(一部10/8~)から適用された定期保険の通達について述べていきます。
結論から言うと契約した保険毎に資産計上割合が変わる可能性があります。
なお先に2点注意事項を述べます。
・具体的な経理処理につきましては所轄税務署や税理士などの資格を持った専門家にご相談ください。あくまで一般論と参考として記載しております。
・本記事は2022年2月9日現在の通達内容を基に構成しております。
それでは順に追っていきます。
▼契約形態を限定します。
契約者:法人
被保険者:役員及び従業員
保険金受取人:契約者と同じ
保険種類:定期保険
としたものに限定します。この前提が変わるとまた違った内容になる可能性がでてきます。
▼該当の法人税基本通達
詳細は国税庁HPにあります。9-3-5及び9-3-5の2が該当箇所です。私はいつもこめかみを抑えながら読みます。
一言で言うと、その保険の最高の解約返戻率に併せて資産計上割合が変わります。では具体的にはどのように変わっていくのでしょうか。まとめてみます。
■資産計上割合と条件
▼資産計上割合0%
以下の1または2の場合が該当します。
1.最高解約返戻率が50%以下であること
2.以下の2条件を満たす場合
・最高解約返戻率が50%~70%以下であること
・その範囲の1被保険者の合算した保険料が年間30万円以下であること1はそのままです。2が少しわかりづらいので解説します。
・その範囲の1被保険者の合算した保険料が30万円以下であること
契約が一つであれば条件通りです。
2.の条件を満たす定期保険に複数加入している場合には、保険料を合算して考えます。合算した年間保険料(月払いなら12回分、年払いなら1回分)が30万円以下なら資産計上は不要と考えられます。もし超えた場合には、次の項目の「資産計上割合40%」の扱いになります。
合算する対象は
・2.の条件を満たすものだけですので、それ以外の保険は合算しません。
・同法人による同被保険者の保険に限ります。どちらかが違えば合算しません。
・保険会社が異なっても合算します。
・通達効力発生後の契約のみ合算します。追加で加入する場合には注意が必要です。契約時期が異なろうとも、その年度に払っている保険料に関しては合算します。昨年までは資産計上0円でも今期は増えるという可能性も出てきます。
新たに保険会社や代理店と取引する場合には、少し注意する必要があるかもしれません。
▼資産計上割合40%
・最高解約返戻率50%超~70%以下であること
・資産計上割合0%の対象の契約は除く
なお契約途中で資産計上割合が変わってきます。
1.資産計上割合40% → 契約当初~保険期間×0.4(年)以内
2.資産計上割合0% → 1.の期間終了後~保険期間×0.75(年)以内
3.資産計上割合0%+資産計上取崩 → 2.期間終了後~保険期間終了まで(取崩は期間に応じて平均します)
多くの場合に1.の期間内に最高解約返戻率に到達します。
▼資産計上割合60%
こちらは資産計上割合40%と似ています。
・最高解約返戻率70%超~85%以下であること
なお契約途中で資産計上割合が変わってきます。資産計上割合40%と同じです。
1.資産計上割合60% → 契約当初~保険期間×0.4(年)以内
2.資産計上割合0% → 1.の期間終了後~保険期間×0.75(年)以内
3.資産計上割合0%+資産計上取崩 → 2.の期間終了後~保険期間終了まで(取崩は期間に応じて平均にします)
多くの場合に1.の期間内に最高解約返戻率に到達します。まれに2.の期間内になるものもあります。
▼資産計上割合76.5%以上
この区分は今までとは内容が異なります。それでは見ていきます。
・最高解約返戻率85%超であること
この場合は次の方法で資産計上額を決定します。
ここまでは問題ありませんね。
1.最高解約返戻率×0.9(当初10年間)
2.最高解約返戻率×0.7(11年目~資産計上期間終了まで)
参考
1~10年目(最高解約返戻率)85.01%×0.9=76.509(資産計上割合)
11年目~85.01%×0.7=59.507(資産計上割合)
となると考えられます。
表題を「資産計上割合76.5%以上」としているのは最高解約返戻率を85%で仮定した場合の最大値です。
では資産計上期間や取崩期間はどうなるのでしょうか。
・資産計上期間
以下の1.または2.の範囲です。
1.解約返戻率が最高になるまで(5年未満でも最低5年)
2.(当年度の解約返戻金額-前年度の解約返戻金額)/年間保険料×100=70%超・資産計上期間終了後
資産計上割合は0%になります。・資産取崩期間
解約返戻金額最高値の期間経過後から保険期間満了まで
この期間で資産計上額を平均して取り崩して損金に算入します。
一件だけならばそれほどでもありませんが、複数ある場合には混乱が予想されます。特に長く続けていくと途中で損金が変わる可能性もあります。
そのため設計書と保険証券は取っておくことをお勧めします。代理店の立場から申しますと、ぜひ何卒取っておいてくださると本当に助かります。よろしくお願い致します。
■参考
最後にいくつか参考をまとめておきます。
・損金割合=(1-資産計上割合)
・この通達の適用は2019年7/8~(一部10/8~)となっています。その前に契約したものは、基本的には該当しません。
・解約返戻率は厳密に計算したものを利用することが原則とされています。一方で保険会社の設計書の数値の利用も認められています。ただし少数点第2位以下を切り捨てた場合のみとのことです。
・資産計上期間は、もしひと月未満の端数が生じる場合には、端数は切り捨てるのが原則です。
・取崩期間は、もしひと月未満の端数が生じる場合には、端数は切り上げるのが原則です。
通達のFAQは以下ページからご覧いただけます。丁寧にやり取りしている印象です。
定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ|国税庁www.nta.go.jp
■結びとお礼
この通達変更は保険業界ではバレンタインショックと呼ばれていました。2019年2月14日に国税庁から各保険会社に通達改正の方針が出されたためです。あれからもう3年もたつのですね。売るものあるの?大丈夫?と言われたこともありましたけれど、今もこうして業務が続けられているのは支えてくださっている皆様のおかげです。この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございます。
■担当の一言
過去、noteに書いていたものをUCnoteにも徐々に載せていきます。noteは2022年から始めましたが、結構書いていたんだな、と感じます。続けていると、書き方に変遷も見られて面白いですね。