今後の保険会社と代理店の動向が決まる?業務改善計画の内容を見てみました。

こんにちは、経営者のための保険代理店ユナイトコンサルティングのUCnote担当です。
以前、生保2社の業務改善命令の比較という記事を書きました。今回は、その命令を受けて2社が出した業務改善計画の内容を見ていきたいと思います。
今後求められる保険会社および代理店像を考えていくうえで大切な指針になっていくのではないでしょうか。
目次
■業務改善命令の背景
■マニュライフ生命の業務改善計画
■エヌエヌ生命の業務改善計画
■2社の計画の印象
■まとめ
■業務改善命令の背景
まず背景を簡単に説明します。
2019年と2021年に法人保険に関する通達の改正がありました。その後、2社の保険会社が業務改善命令を受けました。
改正された通達は国税庁のものであり、どちらの保険会社も通達に反するような案内をしていたわけではありません。では、なぜ業務改善命令を出されたのでしょうか。 それは、業務改善命令を出したのは国税庁ではなく、保険会社の監督省庁である金融庁だからです。
金融庁はかねてより(少なくとも通達の改正時から)、税に偏った販売手法の見直し(保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動の見直しと呼ばれています。)を各保険会社に求めていました。その中で、依然として税に偏った商品開発および販売手法が行われていたとして業務改善命令が出されました。
昨年と今年にマニュライフ生命とエヌエヌ生命に業務改善命令が出されたのですが、2社はすでに業務改善計画を作成し、公表しています。次にその内容を見てみたいと思います。
■マニュライフ生命の業務改善計画
まずは、マニュライフ生命の業務改善命令の内容です。2022年8月に出されました。全文は業務改善計画について (manulife.co.jp)の資料をご覧ください。
私なりにまとめますと、
●業務改善委員会の設置とPDCAサイクルの徹底
●責任の明確化と処分
・役員報酬の減額
・退任後の役員の退職金の返還
●不適切募集による契約の調査していく
・該当の恐れのある契約者への確認
・名義変更時に理由を確認する。
・名義変更を原則認めない。
●営業優先ではなく、コンプライアンスや顧客保護の優先度を高める。
・管理者の適性の見直し
・賞与規定にコンプライアンス評価制度の導入
・営業目標設定の見直し
●適切な募集管理態勢の確立
・不適切募集の場合に引き受けできない旨の説明
・営業部門の自立的改善機能の確立
・データ分析に基づいて代理店や募集人の不適切募集の疑いの検知と予防。
●適切な商品開発
・商品審議会に税務部長の追加。
・税務取扱いの事前照会
・販売後も不適切な募集に利用されていないかのモニタリングを行う。
●ガバナンスの強化
・社外取締役等の第三者を交えた監督機能の強化
・営業部門の自立的監督機能
・コンプライアンス部門の人員強化
・アジアのコンプライアンス責任者やリスク・マネジメント責任者との情報共有や会議の実施。
・監査部門の強化のための、保険募集実務に通じた人材の育成。
■エヌエヌ生命の業務改善計画
次に、エヌエヌ生命生命の業務改善命令の内容です。2023年3月に出されました。全文は業務改善計画について | エヌエヌ生命保険 : 法人・中小企業向け保険 (nnlife.co.jp)の資料をご覧ください。
以下がまとめです。
●業務改善実行委員会の設置とPDCAサイクルの徹底
●経営管理体制の強化
・現役員の役員報酬や賞与の減額や退任
・前CEOの役員報酬の返上
・金融機関のガバナンスや法令を熟知した社外取締役の増員
・NNグループの支援
●今後のビジネスモデルのあり方に関する検討
・中小企業サポーターであり続ける
・解約返戻金のない死亡保障性商品や生存保障性商品等への注力
●不適切募集による契約の調査
・不適切な募集行為のリスクを内包する商品に関しての調査。
●適切な募集管理態勢の確立
・営業目標の見直し
・社内評価の見直し
・保険募集プロセスの見直し
・適性を考慮した増員
・募集資料管理体制の改善
●引受管理態勢の確立
●商品開発管理態勢の確立
・商品開発時の募集関連リスクの評価のための協議
・募集関連リスクの評価に経営陣が関与する
・商品開発に、法務・コンプライアンス担当役員を追加
・販売開始後もモニタリングしていく
■2社の計画の印象
この項目では2社改善計画の内容への印象を書いています。
結論としては、内容にはそれほど違いがありません。処分内容に大きな違いがないため、改善の方向や方法も似通っていると考えられます。 ただし、項目の順番が異なります。これは、業務改善命令の中の項目の順番が異なるためです。すべての項目が重要なことは言うまでもありませんが、先に挙げられている項目ほど、金融庁がその保険会社に対して特に重視していることなのだろうと推測されます。この観点から考えると、
マニュライフ生命は、トップの責任の追及、不適切募集の横行、営業優先の改善などが特に求められています。
一方、エヌエヌ生命は、経営管理体制の強化とビジネスモデルの見直しが要求されています。
改善点は、結局のところ似通っていますが、マニュライフ生命の方が問題の特定がより明確であり、エヌエヌ生命では、組織全体の再評価と見直しが求められていると感じました。
■まとめ
今回は、業務改善計画について比較しました。以下にまとめます。
・両社の計画内容は類似しています。
・筆者の印象として、マニュライフ生命はトップと営業に重点が置かれており、エヌエヌ生命では組織全体の見直しが求められていると考えられます。
処分とは本当につらいものです。できる限り避けたいのは当然です。しかしながら後になってみると、それがさらなる発展への契機になっていることもあるかもしれません(そう思いたいです)。両社とも、この経験を踏まえて前進し続けていって欲しいと思います。ちなみにマニュライフ生命は、すでにこの計画の進捗についても報告を挙げていますので、ご興味ある方はこちらもご覧ください。(業務改善計画 進捗状況について (manulife.co.jp))
この2社に限らず、保険会社や代理店にとってコンプライアンスへの取り組みが最優先となっています。弊社も同様に、コンプライアンス等を見直しながら、経営者の方々に、保険の活用を促進していく努力を続けていきたいと考えています。
お忙しい中、最後までお読みいただきありがとうございました。
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