2025.09.19 経営者の方へ

経営者が認知症になったら?知らないと危険なリスクと対策

経営者が認知症になったら?知らないと危険なリスクと対策

こんにちは、「自分でやる!」と歯ブラシを持ったままダラ〜ンとテレビに見入る息子にイライラしているユナイトnote編集部です。

意思があるような、ないような…。

さて、世の中には「意思を持っていても法的には失われる」病気があります。

それが認知症です。

今回は、経営者が認知症になった場合に起こり得るリスクと、取るべき対策についてお伝えします。特に中小企業経営者の方には、必ず押さえておいてほしい内容です。

 

📝 結論:認知症になると起こること

  • 契約行為が一切できなくなる
  • 📉 自社株を譲渡できず、経営が停滞する
  • 🧊 銀行口座など資産が凍結される
  • 対策は「なる前」にしか打てない

 

🧑‍💼 認知症でも経営は可能?

形式的には可能です。ただし後見人制度が始まると、取締役を退任しなければならなくなります(会社法330条および民法653条3号)。

また、法的な問題としての一大事は契約できなくなることです。

 まず、⚖️ 法的な問題です。

認知症と診断されると、契約行為は無効になります。つまり、印鑑やサインに法的効力がなくなるのです。

「ここだけの話、代筆すればいいんじゃ?」と思う方もいるかもしれませんが、それは私文書偽造にあたり大きなリスクを伴います。

 さらに、🧠 症状面でも問題があります。性格が急に変わったり、言動を忘れて繰り返したり…。共に働く人や取引先が振り回され、組織が混乱する可能性が高まります。

実際に、弊社の代表も体験しました。

 とても温厚だった取引先の方が、突然激高して詰め寄ってきたのです。特に失礼をしたわけではなく、むしろ相手を助けた場面だったにもかかわらず、です。

その後、認知症と判明し、別のご担当者が引き継いでくださったため事なきを得ましたが、それまでは取引先を変えることまで検討せざるを得ませんでした。

 

📊 自社株が譲れない?

経営において特に大きな問題が「株式譲渡」です。

大株主が認知症になると、株の売却・譲渡はできず、新しい代表も選任できません。役員報酬の変更すら不可能になります。

認知症であっても株主としての議決権自体は残ります。

しかし、その行使は無効と判断されてしまうのです。

「紙一枚くらい誰かが書けばいいだろう」と思っても、診断日やその時の状態は調べればすぐにわかってしまいます。

 

🧊 資産の凍結

認知症と診断されると、銀行の預金も制限されます。ATMの引き出しは可能でも、大きなお金は使えなくなります。後見人が選定されるまで資金が凍結され、事業や家庭の資金繰りに支障をきたす恐れがあります。

(余談ですが、👩‍❤️‍👨 配偶者が認知症の場合には、相続発生と同時に資産が凍結され、遺産分割協議ができないケースもあります。)

 

🛡️ 対策は「認知症になる前」に

認知症になってからでは手遅れです。主な対策は以下のとおりです。

  • 📑 株式の早期譲渡:通常の事業承継の一環として。これがスムーズならいうことはないのですが。
  • 🤝 信託の活用:株式の所有と名義を分け、議決権などを後継者に移す仕組み。死亡後の移転方法も契約で決められる。
  • 🏛️ 属人的株式:定款に「特定株主が認知症になった場合は議決権ゼロ」と定める方法。3/4以上の株主同意が必要。
  • ✍️ 遺言の作成:紛争リスクを避ける最重要ツール。信託で代用する方法も。
  • 👨‍👩‍⚖️ 任意後見制度:信頼できる親族や専門家と事前に契約し、後見人を自ら指定できる制度。後継者候補を任意後見人にするのが有効。

 

⚖️ 認知症後にできることは?

準備をしていなかった場合は、成年後見制度を利用することになります。

この後見人は家庭裁判所が選任するため、自分では選べません。弁護士などの専門家が就任することも多いです。後見人の仕事は、被後見人の資産管理に徹することであり、経営の意思決定や株式売却に協力してくれるとは限りません

 

🪙 保険はどうなる?

 認知症になると新規加入は不可能です。つまり、相続対策や資産分割の準備も後手に回ってしまいます。

 保険金の受取人が認知症の場合には、2通りの対応があります。まず、指定代理人が手続きを行う場合です。給付金の入金先は原則本人名義ですが、代理人名義の口座に振り込むケースも可能。ただし給付金の使い道によっては税務上のリスクがあるため注意が必要です。
また、後見人を立てた場合には、後見人が認知症の方の財産として受け取ります。もし、先に指定代理人が受け取っていたとしても、返還を要請される可能性があります。多くの場合、指定代理人よりも後見人の権利の方が優先されるようです。

 

📌 まとめ

認知症は、経営者にとって「事業承継の最大のリスク」のひとつです。

  • 契約できない
  • 📉 株式を譲れない
  • 🧊 資産が凍結される

これらはすべて、発症前にしか対策できません

認知症は基本的にはゆっくり始まりますが、他の病気やけがが原因になることも。

「まだ元気だから大丈夫」と思わず、早めの準備をおすすめします。

 

※注意点

記事内容の正誤に関わらず、読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

より正確な内容を知りたい場合は「■参考」などをご覧いただければと思います。

本記事は2025年9月時点の情報に基づいています。

詳細は税理士や税務署にご確認ください。

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■参考

▼弊社note私文書偽造等について

▼弊社note経営者に必要なのは遺言?遺書?違いを押さえて適切な利用を。

日本公証人連合会1遺言の意義および種類Q3

▼保険会社の研修

e-Gov法令検索 会社法330条

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